本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

読書日記(日本文学)

横光利一の短編集を読む

横光利一(1898年<明治31年>~1947年<昭和22年>)の代表的短編小説と中編小説を集めた『日輪・春は馬車に乗って』(岩波文庫、1981年)を読んだ。横光利一の名前は知っていても、今まで作品を読んだことがまったくなかったのだが、きっかけとなったのは森敦。横…

死の舞踏をつむぐ森敦の『われ逝くもののごとく』

森敦(1912年<明治45年>~89年<平成元年>)晩年の1987年に刊行された長編小説『われ逝くもののごとく』(1991年、講談社文芸文庫)を読んだ。山形県庄内地方を舞台にした叙事詩的な大作だ。 森の伝記を調べると、配偶者が庄内地方出身で、このため月山で一冬を過…

本然の姿とは?ーー森敦『月山』を読む

森敦(1912年<明治45年>~89年<平成元年>)の『月山』(1974年<昭和49年>、河出書房新社)を読んだ。1951年<昭和26年>)に森が山形県の月山で一冬過ごした体験にもとづく作品集で、同年の芥川賞受賞作。このとき森は62歳で、62歳での芥川賞受賞は、当時高齢受賞の…

森敦の講演録『十二夜 月山注連寺にて』を読む

森敦(1912年<明治45年>~89年<平成元年>)の講演録(実業之日本社、1987年)を読んだ。この本は、森敦の晩年に、芥川賞受賞作『月山』の舞台となった山形県庄内地方の寺・注連寺で行った連続講演の記録。小説『月山』には、主人公の生い立ちやなぜ月山で一冬過…

構成がすごい丸谷才一の『樹影譚』

丸谷才一の『樹影譚』(文春文庫、1991年)を読んだ。「鈍感な青年」「樹影譚」「夢を買ひます」の3篇からなる短編小説集だ。 最初の「鈍感な青年」は私が鈍感なせいか良さがよく分からなかったが、表題作「樹影譚」と「夢を買ひます」はとてもおもしろかった…

砂川文次『ブラックボックス』を読む

砂川文次の新作小説『ブラックボックス』(講談社、2022年)を読んだ。今年はじめの第166回芥川賞受賞作だ。砂川文次の作品が気になったのは、前作『戦場のレビヤタン』(文藝春秋、2019年)の記事でも書いたが、自衛隊に入隊し、退官後に小説を書き始めたという…

砂川文次『戦場のレビヤタン』を読む

今年の第166回芥川賞受賞作『ブラックボックス』の著者・砂川文次が気になって、まずはその前作『戦場のレビヤタン』(文藝春秋、2019年)を読んでみた。単行本『戦場のレビヤタン』は、中編小説「戦場のレビヤタン」(2018年)と「市街戦」(2016年)の2作を収め…

『ドライブ・マイ・カー』の原作とチェーホフを読む

濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』を観たのをきっかけに、その原作である村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』(文春文庫)と、小説および映画のなかで重要な役割を果たすチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』(新潮文庫、神西清訳)を読んでみ…

おもしろくておもしろくなかった佐藤賢一の『遺訓』

『遺訓』(佐藤賢一、新潮文庫、2021年)を読み終えた。同じ著者の『新徴組』の続編といっていい作品だ。『新徴組』が幕末から明治維新にかけての庄内藩の動きを描いているのに対し、『遺訓』は明治6年から明治11年にかけての、庄内と薩摩の動きを描く。 庄内…

佐藤賢一『新徴組』を読む

『新徴組』(佐藤賢一、新潮社、2010年)を読み終えた。幕末から明治にかけての江戸と東北を舞台にした歴史小説だ。 著者・佐藤賢一の庄内に対する思い入れが感じられる『新徴組』 はじめに新徴組について簡単に説明しておくと、幕末の江戸で、市中警備のため…

『竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末』を読む

『奥羽越列藩同盟 東日本政府樹立の夢』(星 亮一)を受けて、この本のなかに出てきた仙台藩士・玉虫左太夫を主人公とする歴史小説『竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末』(上田秀人、講談社文庫、2019年)を読んでみた。 幕末の仙台藩士が主人公の『竜は動かず』 玉…

夏目漱石最後の作品『明暗』を読む

『道草』に続いて、夏目漱石(1867年<慶応三年>~1916年<大正五年>)の最後の小説『明暗』(1916年<大正五年>)を読んだ。病気のためについに完成させることができず、未完に終わった大作だ。 物語は、結婚したばかりの津田とお延という夫婦を中心に展開する。新…

夏目漱石『道草』を読む

夏目漱石(1867年<慶応三年>~1916年<大正五年>)の晩年の作品『道草』(1915年<大正四年>)を読んだ。私にとって久しぶりの日本文学、久しぶりの漱石だ。 この作品は漱石の自伝風の物語で、主人公の健三は漱石自身、細君のお住は夏目鏡子夫人をモデルにしている…