本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

加賀乙彦の死を悼む

作家の加賀乙彦(昭和4年<1929年>生)が、1月12日、93歳で亡くなった。

加賀乙彦は、20代のころからずっと、私がもっとも尊敬する日本の作家だった。

架蔵している加賀乙彦の作品の一部、一番下は署名本

私が加賀の名前を知ったのは、雑誌「現代思想」での中村雄二郎との対談がきっかけ。対談の内容は「狂気」をテーマとするものだったようにおもうが、中村雄二郎がどんなことを言うのだろうとおもって読んだところ、対談相手の加賀の発言の方がおもしろかったので、この作家の作品を読んでみようとおもったのだった。当時、加賀は代表作の一つ『宣告』を書き終えたばかりだったので、昭和54年(1979年)頃だったとおもう。

ただし加賀には、『宣告』以前に書いた長編小説が3作あるということだったので、せっかくだから『宣告』を読む前にそれを順番に読んでみようということで、処女長編『フランドルの冬』(昭和42年)から読み始めた。そして第二作『荒れ地を旅する者たち』(昭和46年)、第三作『帰らざる夏』(昭和48年)を読んで、すべてに圧倒され、すぐに『宣告』を読むのはもったいないからと、『フランドルの冬』から『帰らざる夏』までをもう一度読み返した。このため『宣告』に着手するには、読もうと思ってから数年たっていた。しかしその上でようやく『宣告』を読み、またまた圧倒された。

私にとって、こういう作家はあとにも先にも加賀乙彦だけだ。

ご冥福をお祈りしたい。