本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

映画とDVD

炭鉱町の一家の出来事を淡々と描いたJ・フォードの『わが谷は緑なりき』

1月2日はDVDで、アメリカ映画『わが谷は緑なりき』(1941年、ジョン・フォード監督)を鑑賞した。米アカデミー賞の作品賞、監督賞など6部門で受賞した古典的作品だ。フォードは前年にスタインベック原作の『怒りの葡萄』を監督しており、両作品をとおして、社…

現実と非現実の境目に迫ったイラン映画『クローズ・アップ』

元旦は、自宅でイラン映画『クローズ・アップ』(1990年、アッバス・キアロスタミ監督)を鑑賞した。キアロスタミ作品もイラン映画も、鑑賞するのはこれが初めて。 現実の不透明さに迫った『クローズ・アップ』 この作品は、サブジアンという失業中の男が、実…

映画『12人の怒れる男』の作品構成に疑問

このところ、(18世紀)フランスの司法制度に関する本をたくさん読んだので、昨晩は、ちょっと視点をずらしてこの問題を考えてみようと、『12人の怒れる男』(1957年、シドニー・ルメット監督)のDVDを鑑賞した。いわずと知れた陪審員制度をテーマとしたアメリカ…

人道主義について考えさせられる映画『シモーヌ』

昨日は新宿武蔵野館でフランス映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』(オリヴィエ・ダアン監督、2022年作品)を鑑賞した。フランス保健大臣、欧州議会議長などを歴任したシモーヌ・ヴェイユ(1927年~2017年)の生涯を描き、昨年フランスで大ヒットした…

移民問題をうまく料理した『ウイ、シェフ!』

昨日(21日)は新宿ピカデリーで、フランス映画『ウイ、シェフ!』(ルイ=ジュリアン・プティ監督)を観た。名前のとおり料理を題材としたコメディ映画だが、それに難民問題をからめてある。というか、実際には深刻な難民問題を映画にするということが前提にあっ…

母と息子の成長物語『午前4時にパリの夜は明ける』

今日は新宿武蔵野館に行き、フランス映画『午前4時にパリの夜は明ける』(ミカエル・アース監督)を観てきた。1980年代のパリを舞台に、普通の一家の7数年間を追った作品だ。 母と息子の人間的な成長を追った『午前4時にパリの夜は明ける』 主人公の中年女性エ…

しゃれているけど中身もつまった映画『パリタクシー』

23日は角川シネマ有楽町で、フランス映画『パリタクシー』(クリスチャン・カリオン監督)を観た。この作品は、邦題のとおり、92歳の老女マドレーヌが介護施設に入居するのを、タクシー運転手シャルルが迎えに行き、パリの反対側にある施設に送るという物語。…

『愛国者に気をつけろ! 鈴木邦男』を観る

昨日(14日)は、東中野のミニ映画館・ポレポレ東中野に行き『愛国者に気をつけろ! 鈴木邦男』(中村真夕監督)を鑑賞した。この映画は、鈴木邦男(1943年~2023年)という政治活動家に密着主題したドキュメンタリーなのだが、そもそも私はこの鈴木邦男という人物…

ディオールが舞台の『ミセス・ハリス、パリに行く』を観る

昨日(3日)の午後、日比谷のTOHOシネマズシャンテで映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』(アンソニー・ファビアン監督)を観た。 時代設定は1957年頃。ロンドンで家政婦をやっているハリス夫人(レスリー・マンヴィル)が、勤め先の女性の衣装棚でクリスチャン・…

DVDで50年代のミュージカル映画を観る

『精神について』の校正のあいまに、ヴィンセント・ミネリ(1903年~86年)が監督した1950年代のミュージカル映画のDVDを立て続けに3本観た。『巴里のアメリカ人』(51年、ジーン・ケリー主演)、『バンド・ワゴン』(53年、フレッド・アステア主演)、『恋の手ほ…

森敦の講演録『十二夜 月山注連寺にて』を読む

森敦(1912年<明治45年>~89年<平成元年>)の講演録(実業之日本社、1987年)を読んだ。この本は、森敦の晩年に、芥川賞受賞作『月山』の舞台となった山形県庄内地方の寺・注連寺で行った連続講演の記録。小説『月山』には、主人公の生い立ちやなぜ月山で一冬過…

『ドライブ・マイ・カー』の原作とチェーホフを読む

濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』を観たのをきっかけに、その原作である村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』(文春文庫)と、小説および映画のなかで重要な役割を果たすチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』(新潮文庫、神西清訳)を読んでみ…

江戸時代のロシア漂流記『おろしあ国酔夢譚』

DVDで映画『おろしや国酔夢譚』(佐藤純彌監督、1992年)を観た。1782年(天明二年)に神昌丸という船で伊勢から江戸に米を輸送する途中、嵐にあってアリューシャン列島に漂着し、苦労の末1792年(寛政四年)にロシア船で帰国した船乗り大黒屋光太夫ら一行の異国体…