19日、SOMPO美術館(新宿)で開催中の『カナレットとヴェネツィアの輝き』展を鑑賞した。ジョヴァンニ・カナレット(1697年~1768年)は、ヴェドゥータ(風景画)の巨匠と呼ばれる画家で、18世紀ヴェネツィアの華やかな光景をリアルに描いている。日本で初の大規模な展覧会というので、同美術館に行ってみた。
18世紀のヴェネツィア共和国は、国家としては盛期を過ぎているのだが、観光都市として有名で、ヨーロッパ、特にイギリスの富裕な旅行者に大人気だった。彼らは、ヴェネツィア訪問の記念に華やかな風景画を求めるようになり、それにこたえるかたちで多数の作品を描いたのがカナレットだ。
ヴェネツィアは、ルネサンス期にティツィアーノ(1490年~1576年)、ティントレット(1518年~1594年)らの大画家を生んでいるが、彼らが描いたのは人物画、宗教画が多く、風景画はあまり描いていない。風景画は絵画としては比較的新しいジャンルで、カナレットはちょうど旅行者たちからの需要が生じた時代に居合わせ、それに応じて新しい分野を開拓したということのようだ。もちろん、ヴェネツィアという都市の魅力を抜きにしては、こうした需要は生じなかっただろうが。
解説によれば、そんなカナレットにも転機があり、ヨーロッパ中が戦場となったオーストリア継承戦争(1740年~48年)の時代、旅行者も需要も激減し、庇護者のいる1746年にロンドンに移住した。そこで今度はイギリスの景観をヴェネツィア時代と同じ手法で描き、イギリスの画壇に大きな影響を与えた。1755にはヴェネツィアに戻り、アカデミーの会員に選出され、名声につつまれながら亡くなった。
とまあ、略伝は以上のような感じになるが、彼は、海上都市ヴェネツィアの魅力を最大限にキャンバスに再現した代表的な画家ということになるだろう。
そうした華やかな雰囲気の伝わる展覧会だった。
またカナレットら当時の画家たちが構図を決めるのに使ったという光学機械カメラ・オブスキュラが展示してあったのも、個人的にはおもしろかった。
同展は12月28日まで開催。