本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

広島・京都旅行記①ーー4時間かけて広島に

昨日、広島~京都の旅行から戻った。3泊4日の旅程で、私としてはまあ大旅行だ。その様子を、何回かに分けて、ご報告してみようとおもう。

9月30日(土)出発。今回の旅行には連れがいて、彼が歩くのに時間がかかるので、ちょっと早いが9時に川崎市の自宅を出た。東京駅で弁当を買いこんで、11時30分発ののぞみで広島に向かった。

のぞみ号で広島へ。乗車時間は約4時間

新幹線での旅行の楽しみの一つは、社内で食べる弁当。間もなくお昼なので、出発するとさっそく弁当を広げた。

駅弁

広島駅の到着予定時刻は午後3時30分。所要時間約4時間と、距離を考えるととても短いのだが、贅沢なもので、京都を過ぎたあたりから、じっと座っているのがわずらわしくなってきた。もうじっとしていられないというあたりで、ぶじ広島駅到着。

そこから今度は、美術館が手配してくれた車に乗り換えて、約1時間後に目的地である美術館に到着。ここまで、自宅を出てから約8時間。新幹線は早いが、それ以外の移動にどうしても時間がかかる。

さて到着すると、次の日から展覧会が始まるので、ともかく展示を最終チェック。今回の旅行の大きな目的の一つだ。

学芸員の説明を聴きながら、展示をチェック

チェックが終わると、少し間をおいて、美術館に付随しているフレンチ・レストランで夕食をいただいた。今回は、実はこれが楽しみで広島まで来たようなものだ。

夕食は美術館に付随したレストランで。美術館やレストランからは瀬戸内海が見える

エントランスで見ると、このレストランはワインの品ぞろえが素晴らしく、期待度大。

ずらりと並んだワインたち

出できた料理は、アミューズに続いて魚介類のゼリー寄せ。

魚介類のゼリー寄せ、合わせていただいたワインはギリシア

次はスープをきかせた比較的軽い肉料理。

スープを利かせた軽い肉料理、ワインはサヴィニ・レ・ボーヌ

最後がステーキ。供されたワインは、最初がギリシアサントリーニ産の白ワイン。次はブルゴーニュのサヴィニ・レ・ボーヌ。このワインは非常に香りが高くおいしかったので、おもわずお代わりしてしまった(笑)。最後はずっしりとしたボルドー(銘柄は失念)。

食事が終わると、旅の疲れとワインの酔いで、美術館が用意してくれた宿泊施設(ヴィラ)でバタンキュー。

今日から久々の国内旅行

明日(10月1日)から広島県の某美術館である展覧会が開催されることになり、私もその準備作業にかかわったので、開催に立ち会うため、今日から広島に行くことになった。広島に行くのは初めてで、今から楽しみだ。

久々の旅行で楽しみ

また、広島に行った帰りに古都で途中下車し、私の翻訳を出版してくれる古都の大学の担当者とお会いすることになった。古都に行くのは久しぶりだ。今回は、広島往復の旅費を美術館が負担してくれるので、実質無料で古都に行けるのもありがたい。

古都では、烏丸に私が好きなホテルがあるのだが、ここ数年外国人観光客が増えて古都のホテル全体が定員オーバー気味になり、いつも予約に四苦八苦していた。しかし観光客が減って、今回は好きなホテルがすんなり予約ができたので、出版打ち合わせもさることながら、さわやかな古都の秋の空気を存分にすえるのがうれしい。

ただし今回は、昨日まで展覧会に関する諸連絡と校正が終わらず、荷造りはこれから(今、荷造りしながらこの記事を投稿中<笑>)。新幹線は11時半東京駅発なので、けっこうあせっている。それでも、広島までの新幹線は美術館が気をきかせてグリーン車をとってくれたので、新幹線に乗れば、とりあえずあとはのんびりだ(校正用のゲラを抱えてはいるけれど…)。

校正と展覧会準備でくたくた

今月は、『精神について』の大量の校正をかかえてそれだけでも大変だったのだが、それに加えて、美術関係で、ある展覧会の臨時の仕事が入り、両方をこなすのに四苦八苦した。校正作業はかなりの集中が必要なのだが、展覧会の方は、随時返信待ちの連絡が入るので、時間的に大変なだけでなく、作業をするための気持ちの切り替えでくたくたになってしまった。

ようやく3分の1を校正

出版社である古都の大学の担当者から言われていた『精神について』の初校ゲラの本来の校正締め切りは昨日だったのだが、それにはとうてい間に合わず、昨日の夕方、ようやく3分の1の校正を終えて共訳者に郵送し、併せて、担当者に現状報告のメールを入れた。残りは10月にフルスピードで校正するしかない。

アルバイトの出勤日を減らす申し入れ

今日は新宿にある私のアルバイト先に、10月から出勤日を減らして欲しいと申し入れた。私の現在の出勤は週4日、それを週3日にして欲しいという申し入れだ。月4万円程度の減収になるので痛いのだが、今かかえている自分の翻訳の校正をとどこおりなく進めようとすると、それでも休みが足りないくらいだ。会社からは一応了承をもらったが、「校正終了後出勤日を増やすことを希望しても、他のアルバイト社員との関係で週4日に戻すことは難しい」と説明(脅迫?)された。きつい話だが、今の私にとっては、翻訳出版が最大の課題なのでやむをえない。

アルバイト先に、出勤日を減らして欲しいと申し入れた

ちなみに、翻訳を出版すれば相当印税がもらえるのではないかと推測される方もいるかとおもうが、世の中はそんなに甘くない。

印税は、書籍の価格と部数等によって決まる。私が翻訳している『精神について』は、おそらく1冊6,000円程度の価格になるのではないかとおもわれ、印税は最大で書籍の価格の10%なので、1冊あたり約600円。部数はおそらく1,000部。今回の翻訳は2人の共訳なのでそれを折半すると、最大で約30万円にしかならない。悪くすると20万円ということもありうるとおもう。思想関係の本の翻訳の印税収入はせいぜいそんなもので、それだけで生活することは到底不可能だ。それでもなぜ翻訳をするのかと問われれば、格好よく言えば<社会的使命>、実際のところは<見栄>や<虚栄>とこたえるしかない。

ということで、収入不足を補うため、70歳から受け取るつもりで先送りしていた年金を69歳から受け取ることにした。やれやれ、この先、どうなることやら。

死ぬ気で校正しないと間に合わない!?

8月末、古都の大学から『精神について(仮題)』の初校ゲラが届いた。かなり厚くなるのは翻訳段階から分かっていたのだが、届いたゲラは750頁もある!? 7月に大学から送られてきたメールでは、7月末か8月7日までに初校を出力とあったので、作業がかなり遅れているようだ。というのも、『精神について』にはいろいろな異本があって、今回の翻訳は主要な異本を示すことになっているので、その違いをどのように実際の組版に反映するかに時間がかかったらしい。

届いた『精神について』の初校ゲラ

さてこの『精神について』は、1758年7月にフランスで出版された作品だが、当時のフランスは七年戦争の最中で、戦費調達のための増税などをめぐって世論が騒然としていた。国王側は当然増税を求めるのだが、その法案を審議して登録する高等法院は増税に反対していた。また国王側は信仰や出版に対して比較的寛容だったのだが、高等法院は信仰や出版に対して厳格な態度をとっていた。出版の自由が信仰や道徳を脅かすという立場だ。

そうしたなかで、『精神について』は国王の正式な許可を得て出版されたのだが、出版されると同時に、内容が危険であるとして、保守派からの攻撃が始まった。

『精神について』は、文字どおり「精神とは何か? 何が人間を動かしているのか?」という問題を中心に書かれている。参考までに、『精神について』の巻頭に引用されている古代ローマ唯物論哲学者ルクレティウスの言葉を紹介しておきたい。

 

  精神の本性は何からできているか、

  また地上では物事はとんな力によって行われるか、

  その理由をよく知らねばならない。

   (『事物の本性について』<藤沢令夫氏、岩田義一氏による>)。

 

ルクレティウスという権威の陰に隠れているのだが、「精神とは何か?」ということに関する著者のこたえは、「人間を動かすのは欲望と快楽だ」という即物的なものだ。

また議論をすすめるなかでは、著者は、当時知られているアジア、アフリカ及び新大陸の習俗を多数紹介し(日本についても2度言及)、人間の行動やその動機の多様性を指摘しているのだが、それらはヨーロッパの習俗を相対化し、その正当性を揺らがすもので、これがカトリックと高等法院の激しい怒りをかったのだ。

たとえば「愛」について、著者は端的に次のように語る。

 

  愛するとは欲求を抱くこと(Aimer, c'est avoir besoin)。

 

現代からすればなんでもない当然の表現のように思われるが、この言葉を18世紀社会においてみると、危険な響きがしてくる。

このため高等法院と政治的妥協を図りたい国王側はただちに出版許可を撤回し、『精神について』は、正式な出版ルートから姿を消してしまった。しかしこの騒動は当時の読者の強い関心を呼びおこし、すでに出回っていた本は回し読みなどによって広がり、フランスだけでなくヨーロッパ全体に大きな影響を与えている(1759年には英訳が出版)。

ということで、『精神について』は、日本ではまだ紹介されていなかった18世紀思想界の大きな問題作だ。私としてはこの作品をぜひいろいろな人に読んでいただきたいのだが、そのためには死ぬ気で校正しないと出版のタイミングに間に合いそうにない。

キルタンサスの一番花が開花

南アフリカの球根植物キルタンサス(Cyrtanthus)の一番花が開花した。

キルタンサスの一番花が咲いた

咲いたのは<パッショネイト・キング>という名の園芸品種。花は、濃いオレンジ~赤の強烈な色だが、形はわりとすっきりしている。今日はまだ最初の花が咲き始めたばかりだが、1本の花茎に他に3つの蕾をつけている(1本の花茎にたくさんの小さな花が放射状に咲くのがヒガンバナ科の植物の特徴)。

この植物は、春に芽を出して少しずつ成長していたのだが、秋近しと感じたのだろう。いつの間にか蕾をふくらまして開花した。夏の間ずっと水をやっていたので、水分に反応したとは思われないし、晩夏といっても気温はそれほど変化していないので、どういう刺激で秋を感じて開花したのか、ちょっと不思議だ。

 

小球根植物ポリクセナを植え替え

暑い日が続いているが、早いもので、あと数日で9月だ。今年はアルバイト以外に校正その他で例年になくあわただしく、当面この忙しさから解放されそうにもない。毎年9月に入ると、春に咲く植物たちの植え付け、植え替えで忙しくなるのだが、今年はじっくり時間がとれるかどうか分からないので、あいている時間をみつけて早めに植物のケアをすることにした。

一番先に手をつけたのは、南アフリカに自生しているキジカクシ科の小球根植物ポリクセナ(Polyxena)。<ポリクセナ>という名称は旧分類名で、現在はラケナリア(Lachenalia)に統合されている。ラケナリアは一般的に秋から冬にかけて葉を伸ばして翌春開花するのだが、<ポリクセナ>のグループは、9月に芽を出して、9月末から10月初めに開花する。

かわいらしい植物なので、私はpolyxena ensifolia(ピンク花タイプ&白花タイプ)とPolyxena corymbosaの3種類のポリクセナを育てている。

根が伸びていたので、さっそく植え替え

さて、夏の間、雨の当たらない軒下に出しておいた鉢をひっくり返してみたら、もう根がだいぶ伸びている。赤玉土腐葉土を混ぜ合わせた用土をつくって、さっそく植えつけた。