DVDでアメリカ映画『カサブランカ』(M・カーティス監督)を観た。言わずと知れた、ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン主演の恋愛映画の古典だ。

この作品、かつてTVで<ながら視聴>した記憶はあるのだが、きちっと観ていなかったので、細部に関してはかなり記憶が曖昧だった。有名な「あの曲をもう一度弾いて、サム(Play it once again, Sam)」というセリフも、ずっとボガートのセリフだと思いこんでいたのだが、実はバーグマンのセリフだった。そうしたことを含めて、今回この作品きちっと観て、「なるほど、これは恋愛映画の古典的傑作だ」と納得した。主演の二人もさることながら、脚本(H・コッチ、J・エプスタイン、P・エプスタイン)がうまいと思う。
しかしWikipediaで調べたところ、この脚本、撮影開始の時には完成してなくて、撮影しながら書いていったという。でもそこが、ある意味即興的でよかったのではないだろうか。主人公のリック(ボガート)がカサブランカに残る結末も印象的だが、これも最後の最後までどう終わらせるか結論がでず、二つの結末を撮影して、最後に現在の結末に落ち着いたという。そういう意味では、奇跡的な脚本でもある。
ただ即興ゆえの弱さもあると思う。それは、リックとイルザ(バーグマン)の恋のなれそめが描かれておらず、パリで二人が劇的に別れた(そして、リックはそのトラウマを引きづっている)ということしか描かれていないということだ。バーグマンはこの作品にずっと不満だったというが、たしかに、これでは女優として演じようがないと思う。

ところでこの作品では、『時の過ゆくまま』という曲がテーマ曲としてうまく使われているのだが、音楽に関して、それ以外に気がついたことがある。それは、イルザがカサブランカのリックの店に初めてやってくるシーンの音楽だ。その時従業員のサム(ドーリー・ウィルソン)がたまたま弾いている曲は、シャンソンの名曲『聞かせてよ、愛の言葉を(Parlez-moi d’amour)』で、これはとても意味深だ。そしてこの選曲は偶然ではなく、映画スタッフが意図的に選んだのだと思う。
有名な映画なのに、こんなまだあまり触れられていないところを発見すると嬉しくなってしまう。