DVDでアメリカのフィルム・ノワールの傑作『マルタの鷹』(監督ジョン・ヒューストン、1941年)を鑑賞した。ダシール・ハメットの傑作小説の映画化作品だ。

映画の冒頭で、まず<マルタの鷹>とは何かが紹介される。それは、地中海のマルタ騎士団がスペイン国王(=神聖ローマ帝国皇帝)カルロス1世に贈った黄金と宝石でできた鷹の像で、長い間行方不明になっていたが、19世紀末に見つかったとされる。
さて映画の主人公は私立探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)。サンフランシスコにある彼と同僚アーチャーの共同事務所に、ある日、美人の客ワンダリー(メアリー・アスター)が訪れ、「妹を探して欲しい」と依頼する。用件は単純だがなにかうさんくさい雰囲気だ。アーチャーがその依頼を満たすためにホテルに赴くが、そこで拳銃の一撃で殺されてしまう。そこから次々に正体不明の人物が登場し、スペードはその事件と<マルタの鷹>探しに巻き込まれていく。
ジョン・ヒューストンにとっては、これが初の監督作品というが、ともかくアップテンポで、息をつぐ隙も与えずに、観客を謎のなかに巻き込んでいく。
スペードはどちらかといえば寡黙で、現場から現場にひたすら動き回っているのだが、少ないセリフはとてもキレ味がよく印象に残る。ハンフリー・ボガートにとっては、『カサブランカ』のリックより、こちらが本役だろう。
またマルタの鷹を狙う一味の首領で、スペードとたびたびやり合うガットマン役のシドニー・グリーンストリートは、これが映画デビューだが、この役でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。ボガートの演技がいいので、腹に一物をもったガットマンの演技もよくみえる(彼はその後『カサブランカ』で、リックの店を買い取るフェラーリの役で出演している)。
作品は、1942年のアカデミー賞で、助演男優賞のほかに作品賞、脚色賞にノミネートされた(すべて受賞は逸した)。ちなみにこの年のアカデミー作品賞受賞作は『わが谷は緑なりき』(J・フォード監督)。また『市民ケーン』(O・ウェルズ監督)もこの年の作品。当たり年だ。