本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

読書日記(フランス文学)

『失われた時を求めて』~「花咲く乙女たちのかげに」を読む

プルースト『失われた時を求めて』の第二篇「花咲く乙女たちのかげに」を読み終えた。私が読んだのは、高遠弘美氏訳の光文社文庫版。 「花咲く乙女たちのかげに」 第二篇は二部構成で、第一部が「スワン夫人のまわりで」、第二部が「土地の名・土地」という…

『失われた時を求めて』~「スワン家のほうへ」を読む

ドライなミシェル・ウエルベック作品『闘争領域の拡大』『素粒子』を読んだ反動で、急にウェットな文学の極致ともいえるマルセル・プルースト(1871年~1922年)の『失われた時を求めて』が読みたくなった。20世紀文学の最高峰の一つとされながら、あまりの長…

現代の精神的・性的病根を抉り出したウエルベックの『素粒子』

フランスの作家ミシェル・ウエルベック(1958年生)の小説『素粒子』(1998年、野崎歓訳、ちくま文庫<2006年>)は、異なった環境で互いに面識もなく育った異父兄弟を中心にした物語。恋愛や性の面で<闘争領域>が拡大し、それによって、結果的に恋愛や性からはじ…

性の敗残者を描いたウエルベックの『闘争領域の拡大』

フランスの現代作家ミシェル・ウエルベック(1958年生)の小説『闘争領域の拡大』(1994年、中村佳子訳、河出文庫<2018年>)と『素粒子』(1998年、野崎歓訳、ちくま文庫<2006年>)を続けて読んだ。ウエルベックは、次々と刊行される作品が、フランスのみならず、…

18世紀の冒険小説『セトス』を読む

今回は、いつもと少し趣向を変えて、18世紀フランスの冒険小説『セトス』に挑戦してみた。 この小説は、ジャン・テラソン師(1670年~1750年)の作品で、古代エジプトおよびアフリカ大陸を舞台にしている。ギリシア語で書かれた古代エジプトの歴史物語が見つか…