本日はフランス革命記念日、いわゆるパリ祭だ。シャンソンを聴くのもいいが、わが家のCD棚からフランス革命期の音楽をいろいろ取り出して聴いてみようかなとおもっている。
画像は、左上がグレトリー(1741年~1813年)の歌劇『獅子心王リチャード』(1784年初演)、右上がグレトリー、ゴセック(1734年~1829年)、ジルースト(1738年~1799年)のルイ16世時代のミサ曲を集めたアンソロジー、左下がメユール(1763年~1817年)の革命期の作品集(演奏団体は<レ・ジャコバン>!)、右下がグレトリーの歌劇『共和国の薔薇乙女』(1793年初演)などを集めたアンソロジー。
このうち『獅子心王リチャード』は、救出劇としてベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』(1805年初演)の先行作品とされることもある作品。この歌劇のなかの「おお、リチャード、おお、わが国王よ」というアリアは、捕らわれのイングランド国王リチャード(フランス語読みすればリシャール)への忠誠を唄ったもので、フランス革命初期に、ルイ16世を気遣う王党派によってさかんに歌われた。『ラ・マルセイユーズ』の対抗曲ということだろうか。歌詞は次のような感じだ。
おお、リシャール、おお、わが国王よ、
世界中があなたを見捨てている。
それゆえ、あなたの身体を気遣う者は
地上に私しかいない。
世界中で私だけがあなたを鉄鎖から解き放とうとしている。
他のすべての者はあなたを見捨てている。
おお、リシャール、おお、わが国王よ、
世界中があなたを見捨てている。
それゆえ、あなたの身体を気遣う者は
地上に私しかいない。
ああ、その高貴な友、彼の心は苦悩に打ちひしがれて当然なのだ。
そのとおり、彼の心は苦悩に打ちひしがれている。
君主たちよ、友を探し求めよ、
栄光の月桂冠の下にではなく
記憶のなかの娘たちが捧げるお気に入りのミルテの下に。
あらゆる愛、忠実、誠実さは吟遊詩人、
報われる希望はないとしても。
またメユールの作品集は、革命歌「Le Chant du départ(門出の歌)」を中心に編集されたもの。この曲は、なんともすごい歌詞だ!
勝利の女神は歌いながら我らの障害を取り除く、
自由の女神が我らの歩みを導く。
北から南へと、進軍ラッパは闘いの時を告げた。
フランスの敵よ 震えよ!
血と傲慢さに酔った国王たちよ 震えよ!
主権者である人民は進む、
暴君たちよ 往生しろ!
共和国は我らを呼ぶ、
勝利するのか破滅なのかを知ろう。
フランス人なら共和国のために生きねばならぬ!
共和国のため、フランス人なら死なねばならぬ!
この曲はユーチューブでも聴くことができる。
フランス音楽というと、一般的に、18世紀にはラモー(1683年~1764年)、19世紀にはベルリオーズ(1803年~1869年)がいると紹介されるが、その間は空白地帯のような扱いが多い。実はこの時期にも有力な作曲家が出ているのだが、彼らの大半は革命に巻き込まれて、活動が制限されたりしている。演奏される機会は少ないが、聴いてみると、二流だから作品が残らなかったのではなく、時代の流れに巻き込まれた不運な作曲家たちだったという気がしてくる。