本日、ヒガンバナ科植物パンクラティウム・シッケンベルゲリ(Pancratium sickenbergeri)の種を植えた。
パンクラティウム属は、大半が地中海沿岸地方に自生している球根植物で、水仙に近縁。このシッケンベルゲリは、エジプト、イスラエル、レバノンなどに自生し、他のパンクラチウムに比べると花はやや小さく、葉にねじれがあるのが特徴という。
この地域は、地中海性気候で夏季はほとんど雨が降らず、秋から冬・春にかけて雨が降るので、それに合わせて、秋のはじめに芽を出して花を咲かせ、冬から春にかけて生育し、夏の乾季は球根で過ごす。このあたりの生育サイクルは、水仙など、他の地中海地域に自生する球根植物と同じ。
さてこの球根は今年の7月末に入手したもので、さっそく植えつけたところ、9月12日に開花し、そのうちの1輪が結実した。今朝観察したら種を包んでいる外皮が裂け、種が黒く熟していたので、さっそく植えつけることにした。自生環境でのほんとうの植え付け適期は分からないが、普通に考えれば、雨の多い時期が発芽に適しており、それに間に合わせるため、秋になるとすぐに花を咲かせ、すぐに種が熟すようになっているのだろう。ネットで調べると、冬に多い洪水で種が広がるとある。
今後のために、パンクラティウム・シッケンベルゲリの植え付けから種まきまでをまとめると次のようになる。
まず、私は夏に裸の状態で球根を入手したのだが、球根だけでなく根にも水分や養分をたくわえているようで、一般の球根植物に比べると、根は非常に長くて太い。このため根が枯れないようすぐに植えた方がよいと判断したが、この長い根に見合った鉢がない。結局、蘭用の鉢をネットで取り寄せ、それに植えつけた。この根はおそらく乾燥地帯を生き延びるための自然な工夫で、球根だけでなく根そのものに水分や養分を蓄えると同時に、地面の奥深くの水分を吸収できるよう、根が非常に長くなっているのだろう。
夏のあいだはしばらくじっとしていたが、秋になるとあれよあれよという間に花茎が伸び、清楚で綺麗な白い花を咲かせた。花の構造は他のパンクラティウム同様、副花冠付きの2重構造だが、外側の副花冠はシンプル。1本の花茎に複数の花をつけたが、個々の花は1~2日でしおれてしまった。香りは非常に高い。おそらくこれも受粉昆虫が少ない乾燥地帯を生き延びるための知恵で、花はすぐにしおれるが、短い開花期間に確実に受粉するため、昆虫を引き付ける強い芳香を放っているのだろう。
ということで、本日種を播いたので、今後の生育が楽しみだ。