フランス革命の十数年前に出版された『法律制定について』の翻訳校正がようやく一段落した。内容は、タイトルのとおり法律とはどのようなものであるべきかを論じた作品だが、あちらこちらで市民の平等の重要性を指摘しているあたりに革命が近いという雰囲気を感じる。フランス革命が始まった頃は、言わば教科書的によく読まれたようだ。
さてこの翻訳は、コロナ禍が始まった2020年の春頃に初稿ができて、その後気がついたことが出てくるたびにボチボチ手直ししていたのだが、『精神について』の翻訳が手を離れたので、少し前から本格的に見直していた。校正作業はやり出すときりがないのだが、とりあえず、目立つ大きな間違いを訂正し、最近読んだベッカリーアとフーコーの関連を中心に、訳註を追加した。
今回見直して、最後に気がついた大きな間違いは<durent>。私はこの単語を単純に<durer(持続する、続く)>という動詞の三人称複数現在形だと思い込んでいたのだが、それだとどうしても意味が通らない。
そこで、初版の同じ箇所を調べてみると、<durent>の<u>の上にアクサン記号がついている。なのでこれは<devoir(~しなくてはならない、~に負う )>の三人称複数単純過去だと気がついた(ちなみに、現代の綴りではuの上にアクサン記号はつかないので、どちらも同じ形で、文脈によって見分けるしかない)。これだと意味が通るし、だいいち、2行上にdevrionsと同じdevoirが一人称複数条件法現在形で使われているので、それとも整合しする。ということで、自分の間違いを訂正して一安心。ちなみにこの箇所の試訳は、「アテナイ人たちが若者の習俗をかき乱した出来事に負った害悪と同じくらいの利益を、われわれは良い教育に負うことでしょう」にした。この間違いに気づいた分だけ、4年間で自分の翻訳力も少しアップしたということかもしれない。
全体の分量は、約28,000字で原稿用紙400枚分なので、けっこうある。
ということで、翻訳校正作業は終わったものの、かんじんの出版社がない。特殊な内容だし分量もあるので、出版はけっこう大変だ。出版社が見つかるまで、この翻訳はPC上のデータとして休眠ておくしかない。