本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

知人が亡くなって一年

本日は、昨年五月に亡くなった歌人・小説家・評論家、Sさんの命日だ。Sさんが東京に住んでおられたころご自宅にうかがって古典和歌や歌舞伎のことをいろいろ教わったので、移住先の長野県で突然亡くなったと伺って驚いたことを、今でもありありと思いだす。

Sさんが晩年になって長野に移住したのは生活費を切り詰めるためときいているが、最初のうちは長野での生活をそれなりに楽しんでいたものの、最後のころは、雪の中を買い物に出かけなくてはならないことなどに不自由を感じていたようだ。前年末に病気で入院し、その後退院して自宅で生活を始めたときいて喜んでいたのだが、自宅でころんで頭をぶつけ、そのまま再入院して亡くなられたということだった。一度長野を訪問したいとおもいつつ、それはついに果たせずに終わってしまった。

私の本棚にあるSさんの本の一部

その後、Sさんを知る関係者が寄稿して『ユリイカ』の総特集が刊行され、私も思い出を記させていただいた。Sさんが亡くなられたのは残念だが、『ユリイカ』の特集号は大切な記念碑だ。

その寄稿文の文末に、私は藤原道信の歌を引用したのだが、それをここに再掲しておく。

  朝顔をなに儚しと思ひけむ ひとをも花はさこそ見るらめ (藤原道信)