本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

アーチャー『レンブラントをとり返せ』を読む

ジェフリー・アーチャー(1940年生)の小説『レンブラントをとり返せ ロンドン警視庁美術骨董捜査班』(2020年、戸田裕之訳、新潮文庫)を読み終えた。大作「クリフトン年代記」を書き上げたアーチャーが、次のシリーズ物として執筆した<ロンドン警視庁>物の第一作。彼の年齢を考えると、驚くべき筆力というべきだろう。

ロンドン警視庁に持ち込まれるさまざまな事件が描かれている

物語は、ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)の若手捜査官ウィリアム・ウォーウィックを主人公として進められていく。話の中心となるのは、さる美術館から盗み出されたレンブラントの名作『アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち』。邦題のとおりウィリアムをはじめとする捜査班がこの作品をとり返すプロセスが作品の柱だが、この事件の他にさまざまな小さな事件が同時進行的に起こり、ウィリアムたちはそれらを解決していきます。そのもつれた糸を一本ずつ解きほぐしていくのがアーチャーの優れた手腕ということになるのだろうが、私からすると、いろいろな事件が起こるために話がゴチャゴチャしている気がする。

いずれにしても、一つ一つの事件の謎そのものはそれほど複雑ではないのだが、それを立証し、逮捕・裁判に持ち込むプロセスや裁判での駆け引きの描写がこの作品の面白いところだろう。ただし事件そのものよりも駆け引きの細部があまりにも目立つので、イギリスの訴訟や裁判はこんないい加減なものなのかという印象がするのも事実。

他にも読みたい本がいろいろあるので、アーチャー作品の読書はとりあえずこれで終わりにしようかとおもっている。