本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

9月に翻訳出版の連絡がはいる

昨日、古都の大学の担当者から、「順調にいけば、『精神について』を今年の9月くらいに出版したい」という連絡が入った。画像で見ていただけば一目瞭然だが、この本はかなり分厚く、ページ数も多いので出版費用がかなりかさむ。新年度に入り、その予算組みができたということなのだろう。

左はルイ15世時代に出版された原本で、右が私が使ったテクスト。

『精神について』はルイ15世時代に書かれた作品で、人間を行動に駆り立てるものは何かを主題にしているのだが、著者はそれを、結局は<欲望と快楽>だとした。つまり、いわゆる<精神>が人間を動かしているというのは、人間の本質を見誤った誤解であり、<精神>というものの存在を仮定すると、人間の行動原理は理解できなくなるというのが著者の主張だ。しかしこのため、この作品はモラルを破壊する危険な思想を広めようとしているとしてカトリック教会から厳しく批判され、出版停止(発禁)に追い込まれた18世紀の問題作だ。私はその原本(画像参照)を所蔵しているが、この本は政府の発禁措置やその後のフランス革命の騒動を免れて現在まで残っている貴重な本だ。

またこの作品の翻訳の経緯についてはすでに何度か書いているが、2006年頃に翻訳に着手し、古都の大学と連絡を取り出してからももう15年以上たっている。去年、約半年かけて校正も終えた。ここまでくれば、どのような形でもいいからともかく早く出版して欲しいというのが偽らざる本音だ。