本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

ポーランド最後の国王の伝記が届く

小訳『ポーランド問題について』の出版間際になって、Amazon に注文していた『The Last King of Poland』(2020, Weidenfeld & Nicolson)が届いた。内容は、タイトルのとおり、ポーランド最後の国王スタニスワフ2世(1732年~98年、在位1764年~95年)の伝記。

18世紀までのポーランドは、貴族の投票で国王を選ぶ選挙王政の国家だった。スタニスワフ2世はロシアの女帝エカチェリーナ2世の元愛人で、ポーランドを属国化するために彼女によって担ぎ出された人物。このため彼には最初から国王としての権威がなく、貴族の反乱と、ロシア、プロイセンの軍事介入という大混乱を招き、しまいに国土が分割されてポーランドは消滅してしまう。その国家の終焉の当事者について詳しく記したのがこの作品だ。 

著者はポーランド系でイギリスで活動しているフリーの歴史家アダム・ザモイスキ(Adam Zamoyski)。初版は1992年で、私が入手したのはその新版。A5変形版で550頁もある、かなり分厚い労作だ。

ポーランド最後の国王・スタニスワフ2世の詳細な伝記

私の翻訳作品は第一次国家分割直後の1776年のポーランドが舞台で、スタニスワフ2世の在世中のことなので、この本のなかには、もちろん私の訳書の著者についても記されているし、よく読むと、私が訳した本からの引用も載っている。

この本によってポーランド史や翻訳についての私の大きな認識が変わることはなさそうだが、もし少し前にこの本を入手していたら、訳註や解説は少し変わっていたかもしれない。ただ、国外の本について研究したり翻訳したりしていると、こうしたタイミングのずれはどうしても出てくるので、この本に書かれていることは、次にまたポーランド関係の翻訳をするときに利用しようと思う。

著者ザモイスキの両親はポーランド貴族で、1939年、ポーランドがドイツとソビエトに分割された際に国外に逃れ、アダム・ザモイスキ自身はニューヨークで生まれたという。この作品以外にショパンの伝記なども書いており、今月『ショパン プリンス・オブ・ザ・ロマンティックス』が出版される(大西直樹、楠原祥子訳、音楽之友社)。