本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

駆け足の金沢訪問②ーー和食店「伝助」に大満足

金沢に着くと、ホテルでの荷ほどきもほどほどにして、さっそく、ネットで見つけて「金沢で食事をするならこの店っきない」と予約していた和食の店<緑酒 伝助>に向かった。

伝助は、街中の一軒家をつかったいわゆる<隠れ家レストラン>で、若いご主人・濵﨑さんが一人で切り盛りしている。去年まで金沢の別の街にあった店を、西の茶屋街に近い白菊町に移転し、店名もあらためて1月にオープンしたばかり。古い民家を改造した店舗というが、おそるおそる店内に入ってみると、なかはピカピカの清潔な雰囲気。坪庭などもしゃれていて、それだけで濵﨑さんのセンスの良さが伝わってきた。

金沢の隠れ家和食店<緑酒 伝助>

また伝助は、能登など近海でとれる新鮮な魚介類を仕入れ、それをおいしい酒(店名の<緑酒>とはおいしい酒のこと)と一緒に提供するというのが基本コンセプト。調理法に凝るというよりは、素材の良さで勝負しようとしている感じがする。そういう意味では、1月の能登地震で地元の魚が思うように仕入れられないというのは、店にとっても、われわれ客にとってもとても残念なことだ。しかしこの日出された料理からは、そうしたハンデはみじんも感じられなかった。

日本酒の品ぞろえは金沢随一

こちらは揃えている日本酒の一部。日本酒の品ぞろえは金沢でも随一とのこと。「あまりいろいろあり過ぎて、どの酒にするかとても選べない」と言っていたら、濵﨑さんが料理に合う酒を選んでくれた。

棚の上の樽酒<谷泉>は、能登・鶴野酒造の酒。今回の地震で蔵元が壊滅的な被害を受け、今後の仕入れはどうなるか分からないという。ちなみに、この日いただいた日本酒は、順に<日髙見/石巻><鳥海山/由利本荘><谷泉/能登>の3種類。

せっかくなのでこの日の飲み物は日本酒で通したのだが、伝助はワインの品ぞろえも格別で、ワインリストを見ると、赤ならば<ラ・ターシュ>や<エシェゾー>、白は種々の<モンラッシェ>や<コルトン・シャルルマーニュ>という具合で、垂涎のブルゴーニュ・ワインがずらりと並んでいた。

最初の一品はホタテとエンドウ豆の和え物

さて前置きが長くなったが、この日最初の一品は、このホタテとエンドウ豆の和え物。シンプルな料理だが、素材の良さがストレートに伝わってきた。

2皿目はクエのお造り

2皿目はクエのお造りで、九谷焼の変形皿に盛りつけ。九谷焼は、柄がはっきりしすぎていて使い方(盛りつけ方)が難しいのだが、とてもうまく使っている。もちろん、クエも最高!

おいしい料理が次々に出てきた

伝助のメニューは<おまかせコース>のみ。何が出てくるのか予測がつかない楽しさがあって、こちらの食べ具合をみながら、さまざまな料理が、手際よく次々にでてきた。中央の2番目のお造りは、クジラ(左)とサワラ(右)の盛り合わせ。脚韻を踏んでいるのだろうか(笑)。その右の小鉢は自慢のあん肝。奥は、イブリガッコのサラダ。このほかにも、自家製の厚揚げを使った料理、銀杏、ふぐの白子、鰻などをいただいた。

「ご飯が炊けました!」

満腹になったころ合いを見計らって、「ご飯が炊けました!」と濵﨑さんから声がかかる。締めは伝助自慢の<海軍カレー>。

締めにいただいた自慢の<海軍カレー>

訊けば、濵﨑さんは以前海上自衛隊の厨房で勤務していたとのことで、その頃につくっていた料理を再現したのがこのカレー。食感はサラサラしていて、けっこう辛口。自衛官が海の上で食べるカレーなので、胃にもたれないよう配慮してあるのかもしれない。独特の味だが、ベースがどうなっているのかは、ちょっと見当がつかなかった。

ということで、おいしい料理とお酒で、すっかり良い気分になり、店を後にした。