本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

篠山紀信さんの死を悼む

4日、写真家の篠山紀信さんが亡くなった。仕事で何度かお会いしたことがあり、撮影に立ち会ったこともあるので、ご冥福をお祈りしたい。

篠山さんは被写体を前にして迷わなかった

著名な写真家というと、写真をたくさん撮り、そのなかから良い作品を選ぶのでいい写真が発表できると考える方もいるかもしれないが、私が知る限り、篠山さんをはじめ大写真家は、たくさんの写真は撮らない。

私が篠山さんの撮影に立ち会ったのは、約20点ほどのオブジェを撮るときで、関係者は「これはそうとう時間がかかるだろう」と覚悟していたのだが、実際の撮影はあっという間に終わってしまった。

要するに、篠山さんは被写体を前にしてすこしも迷わないのだ。

被写体を前にすると、これは、こういう風にライトをあてて、こういう角度から撮ろうということが一瞬のうちに決まり、1ショットがベストで、それ以上は撮影しない。だから篠山さんの撮影は時間がかからない。

おそらく、篠山さんクラスの写真家になると、日常モノを見るときに、これを撮影すればこういう写真になるという感じで、つねに<カメラ目線>でモノを見ているのではないだろうか。

撮る前から出来上がりの結果も見えているのだろうし、その結果が事前の予想と違うこともないのだろう。だから試し撮りはいらない。それがプロの感覚であり、技なのだとおもう。

すごい人だった。