本と植物と日常

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ポーランド問題の翻訳を約2割終える

3月にはじめた『ポーランドの政治システムについて』(フランス語の作品で、タイトルは仮題)の翻訳、ようやく第5章「国王の個人的資質からみた執行権について」まで終わった。この章の大きなテーマは、ポーランドの王政を選挙制から世襲制に変更する提案だ。この提案はポーランド人の自由を損なうように見なされる可能性があるので、著者も慎重に書いているが、要するに、国王選挙のたびに外国勢力の干渉がおこって混乱するので、そうした干渉をなくすためには、いっそのこと世襲にした方が良いというものだ。

ポーランドの政治問題の翻訳が約2割終わった

翻訳しているなかで難しいのは、文章の内容もさることながら、現代とかなり異なる18世紀のポーランドの政治用語を、現代の日本語でどう表現するかだ。

たとえば、この作品には「Diète générale」という言葉がしばしば出てくる。「Diète」は当時の<国会>を指すので、最初これに<総括的な国会>な訳語をあてたのだが、言葉としてどうもすっきりしない。このため途中から、<国会本会議>という訳語に変更した。しかし、著者が考えている「Diète générale」というのは、現代の日本の国会本会議のように各議員が自由に討議し投票する場ではなく、議員たちが集まって各州の意見を取りまとめる場なので、<会議>というイメージからはちょっと遠い。結局、迷ったあげく<議員総会>という訳語に変えることにした。これでも「Diète générale」の概念をどれだけうまく表現しているかはわからないので、これからまた変更するかもしれない。

また国会議員に関しても、原語は「nonce」で、この言葉はラテン語の<nuntius>に由来し、もともとは<使者・使節>の意味。18世紀のポーランド国会の議員は、各州議会から派遣され、各州の意見を伝える使者的な性格を帯びているので、迷ったあげく、この言葉には<州代表>という訳語を充てた。これもまた、今後変更するかもしれない。

このように迷いの多い翻訳ではあるが、ページ数で計算したら、第5章までが作品全体の約2割で、原稿用紙に換算して枚数約100枚になった。作品全体では約500枚ということになる。がんばれば年内に翻訳が終わるかもしれないが、あいだにいろいろな雑用も入るので、ちょっと難しいかもしれない。年内というのは、努力目標ということにしておこう。ともかく第6章は短いし、執行権の話の続きなので、とりあえずそこだけでも今月中に翻訳を終えたい。

また6月に私が参加している某学会の大会があるので、去年翻訳・出版した『ポーランド問題について』と合わせ、そこでいろいろな人に私が行っている翻訳について説明し、その反応を知りたい。