遅塚忠躬氏の『<ビジュアル版>世界の歴史14 ヨーロッパの革命』(講談社、1985年)を読んだ。18世紀の初めころから19世紀後半までを対象とした近代ヨーロッパの通史だ。タイトルについては、「近代のヨーロッパ」も検討したというが、それだと、何をもって「近代」とするかとかいつからいつまでが「近代」かという問題が出てくるので、あえてそれを避けて、むしろこの時代の特徴である二つの革命、つまり「フランス革命」と「イギリス産業革命」に焦点をあて、それぞれの革命がどのようにして起こったのかを検討したのが本書だ。

構成は「静から動へ」「東西両洋のライバル」「啓蒙の世紀」「フランス革命とナポレオン」「19世紀のヨーロッパ」の五章だてだが、第一章「静から動へ」の分量が圧倒的に多く、17世紀から18世紀にかけてヨーロッパ社会にどのような変化が生じたのかが詳述されている。
そして端的にいうと、その変化とは、飢饉・疫病・戦争から解放されて、ヨーロッパに規則的な人口増加現象が起こったということになる。そのことが死と隣り合わせだった人々の人生観を変え、また人口増が社会集団のあり方を変えていったとされる。特に大半の人々が住む農村では、共同体の解体がすすむと同時に、増加した農民が家内工業をはじめるなどして、社会を下から変えていった。
「農村のあちこちで資本主義的な農業や工業が芽ばえるようになると、都市の商人たちのいとなみも、新しい状況に適応して、資本主義の形成と発展を助長するようになった」(本書107頁)。文字どおり<静から動へ>と、社会がダイナミックに変化していったのが18世紀ということになる。
私がイメージする18世紀ヨーロッパの通史は、国家の盛衰、戦争、王朝や君主の交代など上部構造の変化が中心だったので、本書の視点はとても斬新だった。また私が強い関心をもっている啓蒙思想やフランス革命等の社会変動も、こうした下からの変化に呼応していると考えると、理解しやすくなる。
刊行から41年経っているが、今でも充分読むに値する内容だと思う。またこのシリーズの特徴である<ビジュアル>も非常に充実している。