本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

速いペースで翻訳作業が進む

『経済学者への疑問点』の翻訳作業だが、自分の予想を上回る速いペースで進んでおり、昨日、「第二の手紙」の初稿ができた。初稿なのでまだなおさなくてはならないところが多いのだが、訳稿そのものは原稿用紙約30枚分ある。この「第二の手紙」では、経済学者がさまざまな社会原理(自然的・本質的秩序)を説明するときに用いる「明証性(évidence)」いう術語が批判されている。

速いペースで翻訳作業がすすんでいる

たとえば、土地所有権が社会の自然的・本質的秩序であることは、フィジオクラートによれば「明証的」なのだが、私が翻訳している作品の著者は、社会科学に属する真理の大半は、単に蓋然的であって、それを明証的とするのは、証明のプロセスを拒否した紋切り型の断定だと指摘している。

またこの先、「合法的専制」という概念が問題点として取り上げられるのだが、フィジオクラートが強力な君主による合法的専制を国家運営の理想とするのに対し(それは、フランス絶対王政を支持する立場だ)、著者は、そもそも専制政治は市民の平等という社会原理に反しており合法的ではないと批判する(それが明証的だなどとはとんでもない!)。この合法的専制について少し考えてみると、現代の習近平政権やプーチン政権というのは結局合法的専制ではないかという気がしてくる。つまりそれぞれの国家に、建前としていちおう政権の正当性を規定する法はあるのだが、その法が批判を許さない「明証的」なものとされ、誰も政権の非合法性を指摘できない(したがって、政権交代は起こらない)というシステムになっているのではないだろうか。そう考えてくると、『経済学者への疑問点』という作品の問題提起は、非常に現代的という気がしてくる。

いずれにしても、「第一の手紙」はすでに訳出済みで、その訳稿は原稿用紙約42枚分ある。この作品は10通の手紙で構成されており、単純計算でいくと、全体は原稿用紙約350枚ほどの分量ということになる。来年半ばくらいまでには、なんとか翻訳を仕上げたい。