「暑い、暑い」と言っているうちに9月になってしまった。
さて、8月初旬から始めた『経済学者への疑問点』の翻訳作業だが、なんとか第一の手紙の初稿ができた。この作品は、タイトルのとおり経済哲学者の学説に対して疑問を呈するという形式になっているので、経済学者の著作との突き合わせがけっこう大変だった。

この作品でいう<経済哲学者>とは、現在フィジオクラートと呼ばれている思想グループで、総帥はフランソワ・ケネー。ケネーはもともと外科医で、ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人の侍医。ポンパドゥール夫人の信任が厚く、それを背景に、この当時生れたばかりの経済学などに発言領域を広げていった。経済に関してケネーは、農業への投資と農業生産を重視し、この投資と生産の循環を盛んにすることが、とりもなおさず国を富ますことだと考えた(このため、彼らは従来<重農主義者>と呼ばれていた)。国を富ますためのこうしたアドバイスは、当時の政界を牛耳っていたポンパドゥール夫人の望むところであった。しかし夫人が1764年に亡くなるとケネーらは後ろ盾を失い、失地挽回のためか、発言領域を政治全般に広げていった。もともと農業生産を重視していた彼らにとって、土地所有者の保護は重要な政治的施策であり、土地所有権は侵すことのできない権利だと見なされた。そして彼らは、土地所有権は社会の自然的で本質的な秩序だと主張するのだが、これが私が翻訳している著者の猛批判を呼んでいるのだ。彼の論拠は、たとえばアメリカやアフリカには土地所有権を知らない社会があり、土地所有権を社会の自然的で本質的な秩序と断定するのは誤りだというものだ。この社会の本源的秩序論争が、それぞれの政治的立場と深くかかわっているのは言うまでもない。著者の立場は、大貴族等の土地所有には制限を加え、土地所有者とそうではない階級の不平等を縮小していくべきだというものだ。
ともかく、訳稿は原稿用紙約42枚分ある。この作品は10通の手紙で構成されているが、とりあえずこれで第一関門突破だ。

また寓居のPCコーナーはエアコンが壊れてきかなくなってしまったので、近所のリサイクルショップで急遽冷風扇を買ってきて、暑さをしのぎながら作業している。この冷風扇、¥2,800円にしてはけっこうがんばっている(笑)。