本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

翻訳までの経緯①ーーパリで原著に出会う

昨日はアルバイトが休みで、『精神について』(1758年刊)の校正がきりのいいところまですすんだので、この本の翻訳についてのこれまでの経緯を振り返ってみようとおもう。ただし一番最初から書くと約18年前にさかのぼることになるので、1回ではとても書ききれない。何回かに分けて書いてみよう。

2004年にパリである本を買ったことからすべては始まった

そもそも私が『精神についての』のフランス語のテクスト(1988年刊)を入手したのは2004年だ(画像のクリーム色の本。何度も読んで、もうバラバラになっている)。この年私はパリを訪問したが、時間の余裕があったのでソルボンヌ(パリ大学)の書籍売場に行き、自分の役に立ちそうな本を何冊か購入した。『精神について』はそのなかの1冊だった。

その後この本は、まったく開かれることなく本棚に眠っていたのだが、同じ年に私がはじめて某学会の大会を聴講したことから流れが変わってくる。

この学会はあまりテーマを絞り込まない自由度の高い研究を推奨している。そこで私もまずは聴講を申し込んだのだが、この年の大会は名古屋の南山大学で開催され、東京に帰るときの新幹線で、たまたま『精神について』の研究者Mさんと隣り合わせ、東京に帰るまでずっとお話しをうかがうことになった。こうした偶然はめったにないのだが、専門家からいろいろ話をきいているうちに、俄然この作品に興味がわいてきた。Mさんは『精神について』の著者が書いた手紙をくわしく調べており、そのなかに私が以前から興味をもっていたMという著者が何度か登場し、Mと『精神について』の著者は非常に親しかった(ときどき一緒にトランプ遊びをしていた)ということを、自分の研究書のなかに書いていたのだ。

そこで東京に戻って、それまで本棚で眠っていた『精神について』を読んでみると、たしかにおもしろい。しかしとても分厚い本でもあるので、全部を翻訳することは考えなかったが、試しに最初の方だけ訳してみようとおもいたった。