本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

ふしぎな形のムロウテンナンショウ(室生天南星)が開花

小雨のなか、独特のふしぎな形をしたムロウテンナンショウ(室生天南星、Arisaema yamatense)が開花した。テンナンショウは、日本をはじめとするアジアや北米の一部に自生するサトイモ科の植物。地域によってさまざまな変異があり、このムロウテンナンショウは、奈良県の室生地域など近畿地方や中国、中部地方の山間部にのみ自生している。種小名のyamatenseは、「大和地方の」という意味で、日本の地名を冠した貴重な植物だ。

天南星は中国風のスマートな呼び方で、一般的には仏炎苞の形から、日本ではマムシ草、英語圏ではコブラ・リリーと呼ばれる。

寓居の株は高さ50cm。

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ふしぎな形の室生天南星

茎の上の花のような形のものは、サトイモ科植物、特にテンナンショウに特有で、仏像の光背のように見えるところから仏炎苞と呼ばれる。画像でも少し見えるが、その苞のなかに棒状の肉穂花序と呼ばれる組織があり、実際の花はその花序の基部に固まってついていて、仏炎苞の外からは見えない。

花は雌雄別株で、若いころは雄株、塊根が肥大すると雌株に性転換する。雄株の仏炎苞の基部には隙間があり、匂いに引き寄せられた昆虫が体に花粉をたくさんつけてその隙間から抜け出し、次に雌株のなかに入ると仏炎苞の基部に隙間がないため抜け出すことができなくなり、仏炎苞のなかを動き回って受粉させる。