本と植物と日常

本を読んだり、訳したり、植物に水をやったりの日々…。

ケルビーニのオペラ『ロドイスカ』を聴く

今日は、CDでルイジ・ケルビーニ(1760年~1842年)のオペラ『ロドイスカ(Lodoiska)』(1791年7月初演)を聴いた。ケルビーニはイタリア出身でフランス革命期から王政復古期にかけてフランスで活動した作曲家。原作はフランスの小説家・政治家ルヴェ・ド・クヴレ(Louvet de Couvray、1760年~97年)が1787年~90年にかけて発表した『ド・フォーブラ騎士の恋愛』という長編小説で、ケルビーニはそのなかの『ロドイスカとロジンスキの物語』というエピソードを脚色した台本にもとづいて作曲している。小説が発表されたのも、オペラが作曲されたのも、フランス革命でパリが騒然としていた時期だが、パリのフェドー座での初演は大成功で、200回以上上演されたという。クヴレとケルビーニはちょうど生年が同じで、二人ともこの作品で名をなしている。

 

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18世紀のポーランドを舞台にしたオペラ『ロドイスカ』

さてこの作品は、ポーランドの愛国的政治運動バール連盟が国王スタニスワフ2世とその背後でポーランドの国政を牛耳っていたロシアに抵抗して全国的な反乱を起こしていた時期のポーランドを舞台にしたもので、オペラの筋は、トルコ軍団の助けで、主人公のフロレスキが敵ドルリンスキ男爵に捕らわれている恋人ロドイスカを救出するという物語。救出を主題とするオペラとしては、ベートーヴェンの『フィデリオ』(1805年初演)に先行する。

史実としては、ポーランドはバール連盟の反乱鎮圧後、ロシア、プロイセンオーストリアによって国土を分割されてしまうのだが、困難な状況にあるポーランド国民に対する革命下のフランス国民の共感も、上演成功の背景にあったのかもしれない。なおオペラには登場しないが、原作では、ロドイスカの父はバール連盟敗北後アメリカに渡り、アメリカ独立戦争で活躍して戦死し、「騎兵の父」と呼ばれているカジミエシュ・プワスキ(1746年~79年、英語風に言うとカジミール・プラスキ)をモデルにしているという。

今聴くと、オペラ自体は可もなく不可もないという感じ。バール連盟が反乱を起こしたときも実際にトルコがロシアに宣戦を布告し、背後からバール連盟を助けたのだが、オペラの構成はそうした史実を踏まえており、かつほぼ同時代のモーツァルトの幾つかの作品にみられるトルコ趣味に通じるところもある。またポーランドの森のなかの城が舞台ということで、序曲の雰囲気はウェーバーの『魔弾の射手』(1821年初演)に似ている。

演奏はリッカルド・ムーティ指揮のミラノ・スカラ座管弦楽団。めったに上演されない作品のため、このCDは1991年2月のライブ録音だが、もしかするとこれは、初演後200年という記念公演だったのかもしれない。